船底防汚塗料

船底塗料とは、船の見た目の美しさのためだけでなく、「水棲生物」の付着を防ぐための塗料です。船底塗料は普通の塗料とは違い、水棲生物の付着を防ぐように開発されています船底防汚塗料

船底の汚れ

水棲生物による被害

水棲生物の付着は船の動きを鈍らせ、燃費を悪くするだけでなく、舵を切っていないのに艇の方向が変わってしまったり操舵の安全面で問題を生じます。そのほかにも貝類の水棲生物は「木材やガラス繊維を損傷する分泌物」を出して船体にくっつき船体の表面を傷つけてしまうので、なるべくつかないようにしたいものです。

小生物 海草 スライム
フジツボ類などの小生物は数百万もの微細な幼生を水中に放出します。これらの幼生は、静止している物体に着生する性向があります。殆どの艇は90%の時間を係留した状態で過ごすためこうした水棲生物にとって理想的な付着基盤となってしまいます。

海草類は静止中の物体に巻きつきますがその多くは船体が水中を移動する間に剥がれ落ちてしまいます。しかしブラウンウィードなどの一部の海草は抵抗力が強く高速にも耐えることができます。

スライムは何億もの単細胞藻類によって生じます。藻は着生すると粘着物質を分泌しいったん付着するとより多くの藻が生息するようになります。船が水中を移動しても剥がれ落ちないためスライムはかなり厚い層を形成することができます。
フジツボ ボート底の海草 汚れた船底

塗り替えの時期

多くの水棲生物は水温が上がる夏に繁殖期を迎えるので、その前に塗り替えておくとよいでしょう。空気が乾燥していて天候にも恵まれている5月辺りがお勧めです。

塗料の種類

メーカーによって種類も呼び名も様々ですが、『水に溶けるタイプ』の塗料は「加水分解型」と「水和分解型」2種類に分けることができます。
加水分解型…現在の防汚塗料の主流はこのタイプです。
特徴

加水分解型1

塗料が海水に触れて化学反応を起こします。

・海水に反応して溶け出すため淡水では効果がありません。

加水分解型2

塗料表面が海水に溶ける樹脂へと変化します。

・分子レベルで溶け出すので塗装面がでこぼこになりにくい

加水分解型3

海中の水流により、塗料の塗膜が防汚成分とともに溶け出していき防汚効果を発揮します。水流により塗膜が更新されていくため、塗料の表面が滑らかなままで抵抗がなく、表面に残った防汚成分は水棲生物がつかないようにします。

水和分解型…自己研磨型(自己消耗型)がプラスされる塗料もあります。
特徴

水和分解型1

塗料が海水に触れて化学反応を起こします。

・海水に反応して溶け出すため淡水では効果がありません。

水和分解型2 海水に触れた塗料の表面が水和層に変化します。水和層から防汚剤だけが抜け出て防汚効果を発揮します。

水和分解型3

自己研磨型(自己消耗型)がプラスされると、防汚成分が抜け出した後にスカスカになった表層(スケルトン層)が水流などで剥がれ、新しい表層が現れ防汚効果を持続させます。

・加水分解型の防汚塗料と比較して安価。

・長期的な防汚性能は加水分解型よりも劣る。 

・水流がある箇所から剥がれやすくなるため表面が凸凹になりやすい。

上記以外に最近では長期使用型の『シリコン系』の塗料も開発販売されています。
  シリコン系
特徴 「水に溶けるタイプ」ではなく、塗るとツルツルになり「海水や汚れをはじくタイプ」です。一般的にはスクリュー、シャフト、エンジンの海に入る部分などに塗装します。高性能で効果は長期間続きます。しかし塗装前に下地の加工が簡単ではない上に価格が高く、塗装が剥がれたときの補修が難しいことなどのマイナス面もあり、まだまだ開発途中と言えるでしょう。

防汚成分も塗料を選ぶときに重要なポイントです。

  亜酸化銅を含有する塗料

酸化亜鉛を含有する塗料

特徴

エンジン、スクリューなど金属部には塗ってはいけません。電蝕が起こって金属部がボロボロになってしまいます。もちろんアルミ艇にも使えません。

亜酸化銅が入っていないものはフジツボに効果がありません。 酸化亜鉛含有の塗料は藻に効果。主にFRPや木製の船底に使用されます。

塗装前の注意点

  • 重ね塗り
    新しい船底塗料を旧塗装面に重ね塗りする場合、新しい塗料と旧塗料の相性を考える必要があります。相性の詳細はメーカーに問い合わせるのが一番よいでしょう。
  • プライマーを塗った上に塗料を塗る
    旧塗料が不明な場合、塗装前にプライマー(塗膜の附着性をよくする下地)を塗装します。旧塗膜の浮きや剥がれをスクレーパー(へら状の器具)で除去し、清水ですすぎ、乾燥後に新しく塗装します。
  • 旧塗装をはがして塗る
    旧塗料の塗膜状態が悪い場合は古い塗膜を取り除いてから新しく塗装をします。旧塗装を取り除くペイントリムーバーを使うと便利です。旧塗膜の除去後にプライマーと塗料を塗装します。

その他注意点

オズモシス(浸透)…FRP船の船底にブリスター(水ぶくれ)ができていたら

水ぶくれの中の液体に刺激臭がしたり、指でこすったら油臭かったり、ネバネバしている場合はオズモシスを疑ってください。 乾燥していて異臭もない水ぶくれの場合は空気の細孔が原因と思われますが、ブリスターを発見したらすぐに専門家の検査を受ける方が無難でしょう。

FRP船はFRP(ガラス繊維などの入った繊維強化プラスチック)で造られています。 繊維が入ることで強度は高いのですが、表面は繊維でざらざらしていて塗料が塗りにくい為、ゲルコートという樹脂を外側に塗ってからFRPを流し込み、型抜きして造られます。

オズモシス オズモシス2 オズモシス3.
FRPはざらざらしているのでゲルコートと密着しにくく、境目には小さな空洞がたくさんあいています。

①毛細管現象で船底から汚水が浸透したり、②塗料とゲルコートの損傷で海水が入り強酸化液体に変化します。

液体が増えるとブリスター(水ぶくれ)になったりひび割れを起こしたりします。

塗装の準備

塗料の量の計算

    船のタイプ

    船底部面積の計算方法

    船のタイプ1

    水線長×(吃水+全幅)=船底部面積
      船のタイプ2
    0.5×水線長×(吃水+全幅)=船底部面積
      または
    0.7×水線長×(吃水+全幅)=船底部面積

    用意する物

  • ≪装備≫
    手袋、防塵マスク、帽子、ゴーグル、作業服やビニールカッパなど
  • ≪塗装前清掃≫
    ホース、研磨スポンジ、金だわし、耐水サンドペーパー(#150~#240)、スクレーパー(へら状の器具)、あれば高水圧洗浄機、エアブロー
  • ≪塗装≫
    塗料(船の船底面積を計算後購入してください)、、マスキングテープ、ローラー、刷毛(ハケ)、トレー、計量カップ、塗料を混ぜる棒、あればペイントミキサー
    *塗り替えの場合、旧塗料の種類により『旧塗装の全面除去』または『バインダーコート』が必要になる場合がありますのでご注意ください。
    *新艇の場合、塗装前に剥離剤や汚れを落とすクリーナー(シンナーなど)が必要です。

塗装作業

塗装方法は製品によって大きく異なります。 メーカーの取扱説明書をよくお読みになって行ってください。

 

 

塗替の場合 新艇の場合
準備 1

用意する物が揃ったら、作業のための装備を着用します。

汚れ除去 2 船底に付着した生物および浮いた塗装をスクレーパーや金だわしなどでそぎ落とします。  
3 ■水洗い
清水(水道の水)を使って汚れや塩分をきれいに洗い流します。高水圧洗浄機をお使いのときは船体を傷めないよう出力にご注意ください。
4

船底全面にサンドペーパーを掛けます。

ペーパー掛けの後、清水洗いやエアブローで表面のホコリを除きます。

■旧塗膜の処理
・素地(FRPゲルコート)が露出しているところは
サンドペーパーをかけ、塗膜が浮いたり剥がれかけたりしている場合はスクレーパーで除去します。
※電動研磨機(グラインダー、ディスクサンダー)は手軽ですがゲルコートを痛める可能性があるのでお勧めしません。


・旧塗膜が油性系の場合は塗膜を全て除去してください。

※スクレーパー、ペーパーサンダー、シンナー拭き等


・重ね塗りを何度も繰り返すとどうしても旧塗装が剥がれて凹凸ができ、スピードダウンなどの影響が出ます。数年に一度は古い塗膜をすべて除去してから塗装することをお勧めします。

剥離剤・油の除去
■シンナー拭き

・布にシンナー(アセトン又はウレタン系、エポキシ系)を浸し、ゲルコート表面の離型剤やワックスを除去します。

■サンディング
・ 耐水サンドペーパー(#150~#240)で丁寧に研磨します。

5 ■水洗い
・清水洗いで表面ダスト(粉)を除去し、乾燥させます。

塗装

6 吃水線に沿ってマスキングテープをはります。
7 旧塗装と違う種類の塗料を使用する場合、又は旧塗装の種類がわからない場合にはバインダーを塗装します。使用される船底塗料にあったバインダー塗料をご使用ください。 接着効果を高めるプライマーを塗装します。使用される船底塗料にあったプライマー塗料をご使用ください。
8

塗料をしっかり混ぜて1回目の塗装をします。
※塗料粘度が高くて塗りにくい時は、専用シンナーを少量入れて調整しましょう。(入れすぎないようにご注意ください)
※合金部・プロペラには、亜酸化銅が入っていない専用塗料を使用してください。

9 十分に乾燥させ、2回目の塗装をします。乾燥時間は塗料メーカーによって違います。使用塗料の説明書をよく読み必ず守って下さい。十分な乾燥が仕上がりをよくします。
仕上げ 10 マスキングテープをはがします。
塗装後すぐに没水させず、必ず乾燥時間を守ってください。

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